ブックメーカーで儲けたら税金・納税はどうする?
これはインターネットネット上のブックメーカーでスポーツに賭け、ある程度まとまった利益が稼げてきたらふと考えることではないでしょうか?あるいは、税金、税率、確定申告といった納税関連のワードが特に年末・期末が近づくにつれて頭をよぎるかと思います。
このページはそんなタイミングでご覧いただきたいガイドです。
日本に限らず、世界各国のネットギャンブルに関する税制についての情報をまとめて解説しています。(日本の納税については十数年前に身近な税理士に相談しましたが、本稿をアップするにあたり改めて確認しました)
ブックメーカーもオンラインカジノもネット上のギャンブルというくくりは同じですから、スポーツに賭けている方もカジノゲームで遊んでいる方も参考になれば幸いです。(本ページは2020年時点の情報です。随時アップデートしておりますが、支払いの詳細は必ずお近くの専門家にもお問い合わせください)
このページの内容
世界各国のオンラインギャンブルの賞金にかかる税金支払い
ということで、さっそく見ていきましょう。
大前提となりますが、税制は国によって異なります。ブックメーカーやオンラインカジノでのプレーが合法の国では、税金に関してもそれぞれ独自のルールが定められています。
一方、オンラインギャンブルに特化した法律や税制が未整備でも、現地のランドカジノや宝くじなど国営の賭博ルールがそのまま適用されて、既存の税制度に沿って支払い義務が発生したり免除される国もあります。
つまり非常に複雑・多様なため、各国の事情をひとまとめに説明することはできません。
ただ、根本の部分で大きく2つには分類できます。
その2つとは、プレーで得た賞金に課税される国と非課税の国の2種類です。
前者に属する国は儲かった利益に対し、所定の税率で所得税が発生します。一方後者では、基本的にプレイヤーは勝ち得た賞金から税金を支払う義務がありません。
まず先に後者の非課税の国々からご覧ください。
オンラインギャンブルが合法かつ得た賞金が非課税の国
イギリス
イタリア
ベルギー
スウェーデン
オーストリア
ブルガリア
デンマーク
マルタ
アイルランド
オーストラリア
カナダ
これらの国々に居住してプレーされている方は、ブックメーカーでもオンラインカジノで儲けても賞金に対して税金はかからないようです。ギャンブルサイトの運営者側(オペレーター)は売上に対し多大な税金を支払う義務がありますが、プレイヤーは関係なし。
ただし、合法・非課税と言っても国や居住地域次第でさらに限定的な規則(現地ライセンスで認可されたサイトのみ利用可能など)が適用される可能性がありますのでご注意ください。
オンラインギャンブルが合法かつ賞金が課税される国
一方、下記の国ではそれぞれ収入額や条件に応じた税率で支払いが生じます。
アメリカ
スペイン
フランス
ドイツ*
アメリカではギャンブルの賞金に対して25%の税率で税金が課され、さらに州によっては州税もかかるようです。スペインは、他の収入との合算で税率が異なる累進課税方式。フランスも賞金の申告義務があり1500ユーロ以上からは12%の税率となっています。
ドイツではスポーツベッティングは5%の課税対象となっていて、それをプレイヤーが賭けるたびに徴収するサイト、プレイヤーが儲けた利益から5%徴収するサイト、プレイヤーからは徴収せずサイト運営者側が代わりに負担するサイトなどの違いがあります。
参考文献
https://www.taxback.com/blog/the-ultimate-guide-to-gambling-tax-rates-around-the-world
https://www.forest.bet/news/gambling-tax-free-countries
https://bovegas.com/blog/casino-wiki/gambling-taxation-in-different-countries/
【日本はどうか?】ブックメーカーやオンラインカジノで稼いだ賞金の税金・確定申告
では肝心の日本はどうなのか?海外のゲーミングサイトでプレーして得た賞金に税金はかかるのか?
もしかかるなら所得税の計算や確定申告はどうすれば良いのか気になりますよね。
結論としては、たとえ海外のサイトであってもブックメーカーで得た賞金には税金(所得税)が発生します。ブックメーカーやオンラインカジノの賞金はパチンコや競馬と同じ「一時所得」に分類され、毎年1月1日から12月31日までの1年間で獲得した儲け(総配当-経費)対して、所定の税率で所得税を支払うことになります。
ルールを理解するために、とりあえず要点をまとめました。
- 税金は発生する
- ギャンブルの儲けは一時所得に計上される
- 毎年1月1日~12月31日の儲けを集計する
- 儲けとは、的中ベットの総額からその賭け金額を引いた合計
- 負けたベットは経費に算入できない
- 一時所得には50万円の特別控除がある=儲けが50万円以下なら、かかる所得税は実質ゼロ
- 一時所得の課税対象額=(儲け-50万円特別控除)÷2
- 所得税の計算:(会社の給与や副業の収入 + 上記の一時所得の課税対象額) - 各種控除 x 税率
以下、これらの各項目について補足していきます。
ギャンブルの儲けには、負けた賭け金を経費算入できない
一番のポイントはこちら。ギャンブルで得た賞金を一時所得として計上する際は、外れた賭け金は経費にカウントできません。
例えば、年間トータルで勝った金額が100万円だとします。しかし同年の負けが150万円だった場合。実質的には、手元には一円もなくその年の収支はマイナス50万円ですよね。
すると「マイナスだから税金はゼロでしょ」と考えたくなりますが、実際は100万円の賞金に対して累損の150万円は相殺されず、100万円の配当を得るために使った賭け金のみが経費となります。
つまり、仮に101倍のオッズに1万円賭けて100万円稼いだなら、経費は1万円。100万円が儲け。損失150万円は無視。したがって、実質50万円マイナスでも100万円は儲ったとみなされます。
2倍のオッズに50回1万円ずつ賭けて100万円勝ち得たなら、50万円が経費で50万円が儲けです。1.5倍のオッズに67万円賭けて100万5千円ゲットしたら、計算上は33.5万円が儲け。
年末時点で残高はマイナス50万円になっていたとしても、このように勝ち得た賞金部分のみを計算します。
雑所得や事業所得への計上は可能か?
所得には10種類の区分があり、「一時所得」はその一つです。生命保険の満期金や投信の収益分配なども該当します。(ギャンブルの利益のうち、宝くじやtotoの当選金は該当しません)
ほかには給料の「給与所得」、株の「配当所得」などもあります。事業所得は農業・漁業・製造業・小売業、サービス業などの事業から得られる収入であり、ほかの9種類に該当しないものが雑所得です。
ギャンブルで勝ち得た利益が「一時所得」か「雑所得」かあるいは「事業所得」になるのかという話は、しばしば議論されてきました。
なぜなら、その区分ごとに控除や経費に算入できる対象が変わるため。
前述のとおり一時所得ではハズレの賭けは経費にならず、トータルでは負けているものの税金の支払い義務は発生する、という現象が生じます。これが雑所得や事業所得になるとハズレも経費に組み込むことが可能となり、課税対象額が小さくなります。
「それなら一時所得ではなく雑所得にしたい!」と考えたくなりますよね。しかし、どの所得として計上できるかは取り組み方や必要条件を満たしているか等により異なります。
ざっくりまとめると、営利を目的として継続的に取り組み、かつ恒常的にプラスでない限り雑所得にはなりません。また、当該ギャンブルを業として生計を立てているレベルでなければ事業所得への算入も非現実的です。
このあたりに関しては「競馬のハズレ馬券が経費に算入できるか?」ということが裁判で争われ、2017年に雑所得計上が認められた事例があります。しかしこの判例は、独自の手法によって年間億単位の馬券を購入し、さらに毎年回収率100%を超えていたために主張が通った非常に稀なケースです。
カジノゲームでは基本的にそうした取り組みが不可能なため、「一時所得」以外には選択肢はありません。一方、スポーツベッティングは投資や営利という方向性で賭けていくことは不可能ではないため、雑所得で計上できる余地も残されています。しかし、基本的には大多数のプレイヤーは一時所得になるでしょう。(よほど高額でない限りどちらで計上しても良いようですが、判断について気になることがありましたら必ず専門家にご相談ください)
50万円控除、さらに半額が課税対象
ハズレが経費にならないとは言え、一時所得には50万円の特別控除があり、儲けから50万円は差し引くことができます。よって、獲得賞金から的中ベットの賭け金(経費)を引いた残金が50万円を下回る場合、所得税はかかりません。
また、50万円の控除を超えた部分に対しても、その金額をさらに半分にします。
仮に100万円儲かったのであれば、
(100万円 - 50万円控除)÷2 = 25万円
これが正味の課税される金額です。
この計算で出た金額を、サラリーマンなら給料、個人事業主なら事業所得などの他の収入と合算します。
そこから所得控除や、医療費・生命保険・ふるさと納税などの各種控除をして、残った金額に対し税率をかけて具体的な所得税を計算します。
計算ルールのまとめ
各的中ベットの賞金 - 的中ベットの賭け金 = W
Wの年間トータル - 50万円控除 = X
Xの2分の1 = Y
(他の収入 + Y) - 各種控除 = Z
Z x 金額に応じた税率 = 支払う税金
この計算のWの部分、スポーツベッティングであれば個別のベットごとの収支をチェックすることはまだ可能です。ところがオンラインカジノになると、例えばスロットなら1回遊ぶあいだに何百回もスピンさせるため、どこからどこまでを1回に分けるかは難しいですよね。また、スポーツでもライブ(試合中の賭け)であれば何十回もベットすることもありますし、スロットに近い状態となるでしょう。
そのため、例えば
XX月XX日 10万円プラス
XX月XX日 5万円マイナス
XX月XX日 15万円プラス
XX月XX日 20万円プラス
XX月XX日 10万円マイナス
このように1日ごとの収支を取るという計算方法もあるようです。(このプラスがすでに賭け金を除いた実質の儲けであれば、10 + 15 + 20 = 45万円が上記のWとなる)
サラリーマンベッターの確定申告
さて、利益計算のルールをなんとなくイメージいただいたところで、次は確定申告の話を進めます。
サラリーマンであれば、会社から給料をもらう過程で所得税は天引きされていますから、原則的には確定申告の必要はありません。しかし、2箇所以上から給料を受け取っているダブルワーカーや、年収2000万円以上の方、そして副収入が20万円を超える方は確定申告が必須となります。
例えばサラリーマンとして1つの会社で給料を受け取っていて、その給料の全額が源泉徴収の対象となる場合(もっとも一般的な状態です)、オンラインギャンブルの一時所得も副収入に該当します。よって、一時所得の課税対象額が20万円を超えている場合は確定申告しなければなりません。
前述のとおり、一時所得には「50万円控除してから半分」というルールがあるため、他に副収入がない場合はブックメーカーやオンラインカジノでの儲けが90万円を超えていると、確定申告が必要です。反対に、下回れば不要。
例
儲けが89万円だとします。そこから50万円を引いて、39万円。この2分の1は19.5万円。課税対象が20万円以下に収まったため確定申告は不要。
儲けが120万円なら、120万円 - 50万円控除 = 70万円 ÷ 2 = 35万円が課税対象。20万円を超えているため確定申告が必要。
要するに、他で副業をしていないサラリーマンベッターは「今年の的中ベットは、賭け金を引いてトータル90万円儲かったか?」が一つの目安。
確定申告のやり方
確定申告をする場合、毎年2月16日から3月15日までのあいだに、昨年1年間の収入を計算して手続きを行います。
まず会社から受け取る給料の源泉徴収票や、ブックメーカーでの儲けを計算した収支履歴などの資料をご準備ください。厳密には利用しているブックメーカーに支払調書を依頼すべきですが、発行してもらえないため、代わりに履歴を保存しておきます。
次は、国税庁のウェブサイト内の「確定申告書作成コーナー」で画面の案内に沿って必要事項を打ち込んでいき、プリントアウトして窓口へ持参するか、郵送するか、eTaxでオンラインにて提出します。
その後、払込書を受け取り、記載された税額を期日までに銀行で納めたら完了です。
確定申告の手順
- 収支を計算
- 申告書作成コーナーで書類を作る
- プリントアウトして捺印し、窓口持参、郵送、ネットで送付
- 払込書で税金を納める
計算に用いたプレー履歴・利益の送金明細・銀行の履歴などは提出することはありませんが、スクリーンショットを撮ったりプリントアウトして保管しておいてください。
ブックメーカーやオンラインカジノでのプレーは会社にバレる?バレない?
なお、会社が副業を禁止していたり、会社の人にブックメーカーやオンラインカジノをやっていることを知られたくないという方もいらっしゃると思います。
副収入が20万円を超えて確定申告をすると、翌年の住民税が昨年の申告収入に応じて増えます。サラリーマンは一般的に会社が住民税を給料から天引きして支払う「特別徴収」という仕組みになっているため、その住民税の増額によって、社内の担当者は「ん、昨年より住民税が増えている。この社員は他で収入があるのかな?」と気づく可能性が出てきます。(副収入の内訳までは知られません)
住民税の支払いを特別徴収ではなく「普通徴収」という自分で毎月コンビニや銀行で支払う方式に変えれば、この住民税増額から知られるという心配は無くなります。ただし、多くの自治体は個々人の住民税の滞納や不払いを回避するために、特別徴収を義務化・推進しています。そのため、会社に相談しても変えられないかもしれません。
代案として、確定申告の書類を作る際には「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」という項目が用意してあります。ここを「自分で納付」にすれば、会社からの給料以外の副収入で発生する住民税を分けて支払えるようになります。
サラリーマン以外のベッターの確定申告
サラリーマン以外の場合、例えば個人事業主やフリーター、主婦、年金受給中ならどうすればいいのか?
基本の考え方は同じです。つまり、他の収入に一時所得を合算し、各種控除を引いて所得税を計算して納付します。ブックメーカーの利用前から毎年確定申告しているのであれば、単に一時所得の項目が増えるだけで手続き自体は難しいものではないと思います。
夫(あるいは妻)の扶養に入っている方は、副収入の金額次第で「扶養から外れてしまう」ことに懸念があるかもしれません。ただ、この件に関しては個別の事情によって一概には言えないため。ここでは省略させていただきます。
【重要】ブックメーカーのアカウントやネット口座に置いたままでも課税対象
こちらも一時所得の計算ルールと同じく厳密な話になりますが、日本に未送金の儲けに対しても税金は発生します。年末時点でブックメーカーのアカウント内やネット口座に置いている残高も、その年に発生した儲けはすべて課税対象です。
米ドルやユーロの状態で保有しているなら、年末時点のレートで日本円に計算してください。
さらに、このルールはビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨にも適用されます。仮想通貨で稼いだ賞金も、たとえ日本円に換金していないとしても年末時点のレートで計上しなければなりません。そのため、価格上昇による含み利益で喜んでいると、あとから価格が急落した時に税金支払いのための原資が足りなくなる可能性も出てくるため、税金支払いに応じた換金・利益確定もお忘れなく。
オンラインギャンブルの税金や納税義務についてのまとめ
いかがでしょうか?ブックメーカー・オンラインカジノなどのオンラインギャンブル(ネットギャンブル)について各国の税金、日本の納税や確定申告について、なんとなく把握いただけましたでしょうか?
世界各国のギャンブルと納税については非常に複雑なため、すべてを網羅することはできず簡単なご紹介になってしまいました。とりあえず、イギリスをはじめいくつかのヨーロッパの国やオーストラリア、カナダなどではギャンブルで得た利益は非課税。ベッターにとっては最高です(笑)一方、アメリカやフランスなどではギャンブルの賞金も所得税が発生するようです。
日本の場合についてまとめますと、ギャンブルの利益は一時所得とみなされ、所定の計算で課税されます。オンラインギャンブルそのものの合法性や違法性と納税は話が別ですから、たとえ海外のサイトで儲けた利益だとしても税金はかかります。競馬やパチンコの儲けを律儀に申告している人はいるのか?という実情に対する素朴な疑問はありますが…、それは話が変わってくるためここでは触れません。
改めて要点をご確認ください。
- 税金は発生する
- ギャンブルの儲けは一時所得に計上される
- 毎年1月1日~12月31日の儲けを集計する
- 儲けとは、的中ベットの総額からその賭け金額を引いた合計
- 負けたベットは経費に算入できない
- 一時所得には50万円の特別控除がある=儲けが50万円以下なら、かかる所得税は実質ゼロ
- 一時所得の課税対象額=(儲け-50万円特別控除)÷2
- 所得税の計算:(会社の給与や副業の収入 + 上記の一時所得の課税対象額) - 各種控除 x 税率
一時所得は50万円までは控除。よって、その年にほかの一時所得がないなら、ブックメーカーでの儲けが50万円以下なら確定申告は不要です。他に副収入がないサラリーマンであれば、儲けが90万円を超えると(副収入が20万円以上になるため)確定申告の必要あり。
確定申告期間は毎年2月16〜3月15日まで。国税庁のウェブサイトで申告書を作成して提出し、表示された税額を支払えば完了。これまで一度も確定申告をしたことが無いと手続きが正しくできるか不安になるかもしれませんが、案内に沿って進めるだけなので取り掛かってしまえば意外と簡単です。
最後に個人的なワンポイントをお伝えします。
もし、税金の支払いについて「申告した方がいいのか」「バレる?バレない?」「どうすればいい?」など、漠然とした不安や心配が先行されているようでしたら、情報を集めることからはじめてください。住んでいる国ごとにルールは全然違いますが、心配事の解決には情報収集が効果的。
日本居住なら納税は義務です。この前提のもと、国税庁のページなどで具体的な手続きについての知識を身につければ余計な不安は全部消えます。それでも何か気になるようでしたら必ず税理士にご相談ください。
以上、長文でしたがネットギャンブルと税金というテーマに関して当ページが漠然とした疑問の解消や気持ちの負担軽減の一助になれば幸いです。
随時更新しますので、いつでもお役立てください。